レポート:シンポジウム「A ball can change the life -1つのボールが人生を変える」

A ball CAN CHANGE THE LIFE-1つのボールが人生を変える

 2016年10月22日にシンポジウム「A ball can change the life -1つのボールが人生を変える」を開催しました。文部科学省、スポーツ庁、文化庁主催の「スポーツ・文化・ワールドフォーラム」の公式サイドイベントとして位置づけられた今回のシンポジウムでは、「スポーツ」と「文化」を通じて2020年東京オリンピック・パラリンピック、そして今後の日本社会にスポーツがどのような価値を発信し、役割を担うことができるか熱い議論が交わされました。

 

田嶋幸三さん(写真:横関一浩)
田嶋幸三さん(写真:横関一浩)

 野武士ジャパンコーチの蛭間芳樹さんの挨拶で幕があがり、最初に日本サッカー協会会長であり、国際サッカー連盟(FIFA)理事の田嶋幸三さんに登壇いただきました。「サッカーは世界で最も人気のあるスポーツだからこそできることがある、その可能性を一緒に考えていきましょう」という力強いメッセージとともに、「今、世界中で大きな社会的課題があります。サッカーは言葉の壁を越え、誰とでもすぐチームを組むことができます。そう考えれば、どんな課題も解決することができるのではないかと思わせてくれます。そして、サッカーを楽しむ全ての方々をサッカーファミリーとして日本サッカー協会は応援していきたい」というあたたかい言葉を寄せいただき、会場は「サッカーファミリー」であるという一体感に包まれました。

 

 

レイチェル・メイさん(写真:横関一浩)
レイチェル・メイさん(写真:横関一浩)

 第1部ではホームレス・ワールドカップ本部の国際パートナーシップ・マネージャー・レイチェル・メイさんによる基調講演が行われました。実際の大会の様子を収めたビデオを紹介しながら、大会の変遷やホームレス・ワールドカップが生み出した社会的な効果についてお話いただきました。「ホームレス・ワールドカップは、選手たちに人生を変えるような経験を提供し、さらにはホームレスの人たちに対する世の中の見方・意識を変えることを目指しています」そして、スポーツの持つ可能性について「2016年のグラスゴー大会では、22カ国の報道機関で取り扱われ、330万人がオンラインで試合を観戦し、そのうち180万人の方が生中継で見ていました。また、グラスゴーで観戦した方のうち、84%が「ホームレス」に対する考え方がポジティブに変わり、グラスゴーで開催して良かったと評価しています」と、いままさに変化が起きている事例を紹介して下さいました。

 

糸数温子さん(写真:横関一浩)
糸数温子さん(写真:横関一浩)

 第2部では、スポーツを通じた社会問題の解決に取り組む登壇者5名によるパネルディスカッションを行い、「どうすればサッカーやフットサルが社会問題の解決策となり得るか?」について議論をしました。一般社団法人daimon代表の糸数温子さんは、沖縄で最大の女性のためのフットサル大会「ダイモンカップ」を開催しています。大会コンセプトは「応援・感謝の見える場所づくり」で、選手も応援する人もみんなが参加できるような場を開き、貧困・孤立に抗する地域のコミュニティづくりに取り組んでいます。コートに入れば誰もが対等になり、属性が“無効化”されることが、スポーツの持つ魅力だとお話してくださいました。

 

 

日比野克彦さん(写真:横関一浩)
日比野克彦さん(写真:横関一浩)

  アートとスポーツを組み合わせた活動を行うアーティストであり、日本サッカー協会社会貢献委員会委員長の日比野克彦さんは、スポーツが多くの人の感情を動かす点やルールなどの枠組みをもつことに意味と可能性があると評価されています。「開会式、選手宣誓、表彰式といった大会の仕組みや、選手以外でもスタンドから様々な形で応援するという参加方法があることは、プロでもアマチュアでも、子どものサッカー大会でも、一流のワールドカップでも、同じように感動を共有することができます。」

 

 野武士ジャパンコーチの蛭間芳樹さんは、2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて、日本社会として今一度スポーツや文化について考える機会だと話します。「スポーツと社会の関係性は、それをとらえる側、一人ひとりの問題ではないでしょうか。私たちも「ダイバーシティって何?」と模索しながらいつも活動をしています。特定の人たちだけで活動を行うのではなく、世界から、日本国内から、いろんな人たちと連携しながらダイバーシティカップ、そして野武士ジャパンの活動を継続していきたいと思っています。」

左から長谷川知広さん、蛭間芳樹さん(写真:横関一浩)

 そして、NPO法人ビッグイシュー基金のサッカープログラム担当の長谷川知広さんは、スポーツはチャレンジも失敗も許容される点が良さだと感じています。一方で、数字などによって結果が見えやすい点は人を排除する側面も持ち合わせていることにも注意する必要があると話しました。一人ひとりが上達していく過程や参加者の変化していく様子にも目を向けることに意味があり、そのような経過を応援してくれる人が増えてこそ、本当の意味で「スポーツが文化として根付く」ことなのであり、そうした価値観をホームレス・ワールドカップは体現しているのではないかと会場に投げかけました。

 

 ホームレス・ワールドカップを開催するためには、事務局のみならず、市民や多くの企業、さらには行政も含めた協力体制が必要となります。しかし、日本の現状に目を向けてみると、世界的規模の大会を開催できるようなバックアップを得られているとは言い難い状況にあります。ただ今回、これまでの活動が実を結び、日本サッカー協会の協力をいただけたことは大きな一歩であり、今後は市民や企業、行政といった多様な歯車を噛み合わせていくことが一層重要になります。

 

(写真:横関一浩) 

 ビッグイシューでは、2年前からホームレスだけでなく様々な社会的背景・困難を抱える人たちを対象としたフットサル大会「ダイバーシティカップ」を開催しています。日本ならではの取り組みとして、今回のシンポジウムでも参加者のみなさんから高い関心をお寄せいただきました。ホームレス・ワールドカップのパートナー団体として、「野武士ジャパン」がホームレス・ワールドカップを目指すことはひとつの選択肢として価値があり、ホームレス問題に対する社会の認識を変える土壌をつくることができると考えています。しかし、様々な社会的背景から各国のホームレス事情が異なる中、その違いを認識し、日本に適した形へと活動をシフトさせていく挑戦がいま、必要ではないでしょうか。

 

 ダイバーシティカップには様々な社会的背景・困難を抱えた参加者が集まります。共にボールを蹴りながら時間を過ごす過程でお互いの存在を尊重し、多様性を認め合い、自分とは異なる背景を持った人たちと出会うことで、参加者のなかに確かな変化が生まれています。

 

 スポーツの新たな価値を包摂するダイバーシティカップは、2020年にオリンピック・パラリンピック開催を控えた日本社会にとって大きな試金石となるといえるのではないでしょうか。

 

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 今回のシンポジウムはスポーツ・フォー・ソーシャルインクルージョン実行委員会、認定NPO法人ビッグイシュー基金が共催し、公益財団法人日本サッカー協会に後援、損害保険ジャパン日本興亜株式会社にご協力いただき実現することができました。皆様のご協力、ご支援に心より御礼申し上げます。

 

 

 

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コメント: 1
  • #1

    Renee Bensinger (金曜日, 03 2月 2017 00:42)


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