野武士ジャパンの活動背景

ホープレスになり、ホームレスに
人はなぜホームレス状態になるのでしょうか。失業して収入をなくし、家賃を払えなくなり住居を失くす。この2つの条件だけで人はホームレスにはなりません。3つ目に、友人や家族などの身近な絆を失い、ひとりぼっちになり希望をなくす。つまり、人はHopelessになりHomelessになるのです。

野武士ジャパンの活動は、Hopelessになってしまったホームレス状態の人々が、チームスポーツであるサッカーを通して、自立への心の準備や人間関係をつくる場となることを目指して、2004年にはじまりました。

 

ではホームレスとは一体誰なのでしょうか?
ある研究者は、社会の激しい変化に対応できない人だと言います。だから、誰がホームレスなのかを調べれば、その社会が誰を弱者に仕立て上げようとしているのかがわかるとも言います。かつての日本のホームレス問題は古いタイプの製造、建設・土木などの産業に従事してきた中高年の男性労働者の失業と関わっていました。

 

ところが、2008年の世界同時不況以降、今までは仕事に就くことができていた20~30代の若者が路上生活を余儀なくされるというケースが急増し、ビッグイシューにやってくる人たちの多くは50歳代から30歳代へと急降下しました。

 

この劇的な変化にどのように対応していくのかを考えるため、ビッグイシュー基金では2008年から20~30代の若者ホームレスの方々に聞き取り調査を実施し、支援と予防に取り組んでいます。

調査の結果、若者ホームレスの多くが、家庭環境の影響で不安定な就労体験から自分に自信がもてず、強い自己否定の感情をもち、自立に前向きになれない現実が見えてきました。

(調査の詳細は【若者ホームレス白書】をダウンロードの上、ご覧下さい)

 

そこで、スポーツの楽しさや人とのつながりを通じて、生きる上で大切な「もう一度チャレンジする気持ち」を取り戻す場のひとつになればと、野武士ジャパンの活動を続けています。

 

そして、この活動はホームレス状態の当事者に留まらず、希望が見えにくい状態に置かれているニートやフリーターの若者など、困難な時代を生きる様々な若者と共に活動をしていきます。当事者同士・支援団体同士の交流を通じて、若年者支援団体などにアクセスできるためのネットワークづくりにも取り組んでいきたいと考えています。

野武士ジャパンが考える"ホームレス"の定義

本プロジェクトで考えるホームレスとは、一般にホームレスと呼ばれる「屋根のない状態(野宿)」=ルーフレス状態の人に加えて、「屋根はあるけど家のない状態(ネットカフェ、施設など)」=ハウスレス状態の人を含みます。


・ルーフレス=野宿状態(都市公園、河川、道路、駅舎、その他)
 2014年1月の厚生労働省調査で全国7,508人


・ハウスレス=屋根はあるが、家や行き場がない状態
 ドヤ、施設、ネットカフェ、サウナ、カプセルホテル、ファーストフード店、友人宅、

 飯場など


現在、日本で法的に定められているホームレスの定義は、「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所として日常生活を営んでいる者」(ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法より)となっており、ネットカフェやファーストフード店など深夜営業店舗で過ごす人などが含まれていません。


しかし、人はある日突然、住居を失い、ホームレスになるといったことはなく、不安定な就労、不安定な住居を経て、徐々に路上に近づいていきます。


この点については、 厚生労働省の平成 24 年『ホームレスの実態に関する 全国調査検討会』報告書でも「路上には現れないが、慣習的な住居をもたないでネットカフェや簡易宿泊所などで寝泊まりしている人々や、家賃を滞納してアパートから退去させられる寸前の人々、契約満了になれば会社の寮から退去しなければならない人々、病院や刑務所から退院・退所しても行き先のない人々など、いわゆる広義のホームレスは、むしろ拡大しているとの指摘もある。つまりホームレスの背後には、もっと大きな「予備軍」があって、絶えずそこから流入、あるいは流出していくダイナミズムがある。」と記載されています。


一方、EU加盟国のホームレスの定義は、「『路上生活者』に加え、知人や親族の家に宿泊している人、安い民間の宿に泊まり続けている人、福祉施設に滞在している人なども含む。」となっています。

本プロジェクトでは、ホームレス=路上生活と考えるのではなく、そこに至るプロセスすべてを視野に入れることが予防や支援を考えていく上で重要だと考え、ホームレスの定義を上記のように考えています。